ココアじゃなかった


何もしたくない。できない。お腹すいてない。眠くない。やらなきゃいけないことがたぶんある。ないかも。とダラダラして1時間くらい経ったときに、唐突に思った。

「わたしいま、ココアが飲みたい!!!!!!」

欲望を言葉にできたのは久々だった。無気力でToDoリストをただこなす機械のわたしが、Want To Doを得た。わたしは母親に嫌な顔をされながら近くのコンビニまで歩いた。夜道を歩くことはうちではほとんど禁止されていて、わたしが夜21時以降に家の周辺を歩いたのは、たぶん、前回母親と大喧嘩したときぶりだと思う。

コンビニに向かう道中、前に読んだ漫画のレシピがおいしそうだったなと思い出して、板チョコを3枚と調整豆乳を1リットル買った。ついでに柿の種とポッキーも買った。

わたしはいい気分だった。帰り道は誰もいない。SMAP世界に一つだけの花を歌いながら歩いた。わたしにはいま、やりたいことがある。天にものぼるような気持ちだった。


帰って、チョコレートを湯煎して、その漫画のレシピをそのまんま真似して30分くらいかけてココアを作った。それを持って自室に戻って書きかけで書けない気がしていた文章を書いた。帰り道に、その文章のゆく先を見出せたことも、わたしの機嫌の向上に影響していたと思う。

友だちとスカイプを繋いで、はたと気づいた。これは、ココアじゃなくてホットチョコレートだ。わたし、ココアが飲みたいと思ってたんじゃなかったっけ。舌にのせたそれはひたすらに甘くて、わたしが飲みたかったのはココアじゃなくてホットチョコレートだったんだと思った。気分がよかった。


2019.10.15